「芝川家刊行文献」では、芝川家によって刊行され、このブログの主な参考文献として活用している書物の数々をご紹介していきます。
初回でご紹介するのは「瑞芝録」です。
「瑞芝録」は、芝川又平(初代又右衛門)の孫である又四郎の結婚*)に際し、又四郎の父・二代目又右衛門が木崎好尚氏に依頼して、又平の口述をもとにまとめたものです。毛筆書きの原本は一冊しかなく、今も社内に大切に保管されています。木崎好尚氏は朝日新聞の記者で、文章も書もうまいということから、二代目又右衛門と懇意であった朝日新聞創始者・村山龍平の紹介を受けて本書執筆を依頼したそうです。(「小さな歩み ―芝川又四郎回顧談―」より)
この能筆の原本には旧漢字も多く、通読するのは至難の業ですが、幸いなことに、以前堺屋太一氏の事務所で読みやすい形で原稿用紙に書き写す作業をされており、その原稿をお借りして文書のデジタルデータ化を行いました。
本書は幕末から明治にかけての激動の時代を生き抜いた芝川家の軌跡を知ることのできる大変貴重な一冊です。
■書名について
「瑞芝録」の書名について、この本の編者である木崎氏は次のように述べています。
「おのれ高嘱(芝川家からの依頼)によりてたどたどしくも、当家興隆の本すえつづり、はてさて巻の名を瑞芝録とおはせたるは、幾千世かけて家の名の、いや愛(め)でたからんことを寿(ことほ)ぎてのわざになむ。」
■「瑞芝録」の内容
「瑞芝録」は3冊から成ります。
うち1冊には、芝川又平の誕生から隠居までを記した「芝川又平自伝」、芝川家の先祖と又平をめぐる人々について記された「芝川家由緒記」、又平の行った漆器蒔絵事業と博覧会などへの出品記録を記した「漆器蒔絵事業」の三項が含まれています。
2冊目には「芝川家文書」として芝川家の親族のこと、芝川家の家憲(家の掟)、芝川家の商売における規則などが記されています。
3冊目は又平の妻・きぬの生涯について記された「芝川絹女伝」です。
*)芝川又四郎は1909(明治42)年に結婚。「瑞芝録」は1907(明治40)年と1908
(明治41)年(但し「芝川絹女伝」は1920(大正9)年)に書き上げられている。
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