「西宮七園」のひとつで、現在も高級住宅地として知られる甲東園。戦前、芝川家はここに広大な土地を所有していました。
「甲東園と芝川家」初回は、大阪で貿易業(のち不動産業)を営んでいた芝川家が、甲東園に土地を入手した経緯についてご紹介します。
明治14年「田畑書入質確証」(千島土地株式会社所蔵資料K03_246)
これは、明治14年5月に高田又右衛門と2代目芝川又右衛門が交わした書類です。「書入質」とは、現在の「抵当」のこと。つまり、高田氏が摂津国武庫郡上大市村字山畑新田他の所有地10町7反7畝12歩(地価合計1,254円58銭9厘)を抵当に、月32円50銭の利子で、芝川より2,500円の借金をしたという書類なのです。
明治17年「地所永代売渡確証」(千島土地株式会社所蔵資料K03_260)
3年後の明治17年3月、上記の土地を芝川又右衛門が買収したことを示すのがこの書類です。買収金額は高田氏への貸金と同額の2,500円。『芝蘭遺芳』には、抵当流れとなりやむを得ず買収することになったと記されています。
こうして、芝川家は西宮甲東園に約10万㎡に及ぶ土地を所有することとなったのです。
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